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1964年(昭和39年)7月8日生まれ。蟹座でB型。
広島市出身、東京都国立市在住。 学生時代は水泳部(ちなみに100m自由形のベストタイムが60秒ジャスト)。 一番の趣味はアメリカンフットボール観戦で、1992年以来のNFLファン。好きなチームはTennessee Titans。 好きなアーティストのコンサート(Jeff Beck、MISIA、浜崎あゆみ等)に行ったり、路上ライブで見つけた若手のライブに行ったり。ピアノを始めたのも近年のマイブーム。 「希望の轍」演奏の模様はこちら。 「上からマリコ」演奏の模様はこちら。 「Voyage」演奏の模様はこちら。 ブログパーツ
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『内田樹による内田樹』(内田樹/文春文庫、2017)
☆☆☆☆★ 百冊を超える著書・翻訳書を刊行してきた著者。自作自註の講義で取り上げられた『ためらいの倫理学』『先生はえらい』『レヴィナスと愛の現象学』『街場の中国論』『日本辺境論』『「おじさん」的思考』『昭和のエートス』『下流志向』等を論じる中で生まれた新たな思考が飛翔する一冊。 巻末に著書・翻訳書リストを収録。(以上、出版社の内容紹介より抜粋) 内田先生の本、この私のブログでも、2007年4月に『寝ながら学べる構造主義』(文春新書、2002)から記録が始まり、タグ付けた本は30冊を超えています。 さて本著ですが、この奇妙なタイトルの意味は何かと言うと、これまでに自身が書いた本の解説を自ら行う、というものです。一旦は2013年に単行本として出て、さらにこれが2017年に文庫化されました。対象は、2001年に初めて世に出した『ためらいの倫理学』に始まり、全11冊。 そもそもですが、神戸女学院大学を退職する前年、たくさん出した「ウチダ本」について、「毎週一冊ずつ(聴講生が)取り上げて、それを皆で論じる」という授業を行い、それをテープ起こしにして文字にした。で、たくさん本を出していることもあり、この際「ブックガイド」も必要だろうと、本著の形になったとのようです。まえがきにて、このような経緯を述べられた後、ライターが書いた文章に大幅に加筆修正したり、トピック的に古いものを直したり、意見を追加したり等しているので、ただのブックガイド以上に、単独の本としても読んでもらえると思う、とされています。 実際、先生の話は(おそらく対象となった本から外れて)脱線なり補足なりされている部分が多いようで、未読のものでも、「ブックガイド」部分だけでも十分、先生の「言いたいこと」が伝わってきます。 と言うか、先生のスタンスが、2001年(当時先生は51歳)に初めて本を書かれた時から、変わっていない。論の立て方、物事の考え方というスタイル/形式から、多様性を重んじ、グローバリズムや原理主義を激しく嫌悪する姿勢という立ち位置まで。なので、齢67歳になられた現在に至るまで、全著作が首尾一貫していると思います。それも今や、日本におけるリベラル思想家の第一人者的にまでなってしまった。始まりは(ただの)フランス文学者だったのに(苦笑)。 こう言っては身も蓋もありませんが、やはり先生のベースとなる立ち位置がしっかりしているのと、後は「お人柄」「ご人徳」の為せる業なのでしょうかね。私は、先生の議論が本当に好きであります。 ■
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by sergeant_cooper
| 2018-02-16 10:32
| 書籍・映画
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『街場の天皇論』(内田樹/東洋経済新報社、2017)
☆☆☆★★ 2016年の「おことば」から生前退位特例法案までの動きや、これまでの今上天皇について「死者」をキーワードとしてウチダ流に解釈。 今上天皇による「象徴的行為」を、死者たち、傷ついた人たちの傍らにあること、つまり「共苦すること」であると定義。安倍首相が背負っている死者は祖父・岸信介など選択された血縁者のみだが、今上陛下はすべての死者を背負っていると指摘する。 さらに日本のリベラル・左派勢力は生者=現在・未来を重視するが、過去=死者を軽視するがゆえに負け続けていると喝破。同時に日本は「天皇制」と「立憲デモクラシー」という対立する二つの統治原理が拮抗しているがゆえに、「一枚岩」のロシアや中国、二大政党によって頻繁に政権交代する米仏のような政体に比べて補正・復元力が強いとも論じる。 天皇主義者・内田樹による待望の天皇論。(以上、出版社の内容紹介より抜粋) はじめに、でも述べられていますが、「タイトルを見て意外の感に打たれた方も多かったのではないかと思います。僕だって、まさか自分がこんなタイトルの本を出すことになるとは思っていませんでした」。 経緯としては、出版社の人から、内田先生が随分と天皇制についての考察を書いていることを指摘され、それならと一冊の本にまとめたとのことのよう。内容紹介にあるように、今上天皇の「おことば」に触発されてまとめた考察もあるほか、(断られていますが)直接は無関係なものまで入っています。 私としては、以前、どなたかの先生が、今上天皇こそ最大の護憲主義者である的な議論を展開されていたのを読んでいたので、先生の話も腑に落ちます。天皇陛下は、現行憲法に規定されている国事行為のうちの「儀礼」について、それは死者の鎮魂と、苦しむ生者の慰藉であると解し、かつての戦地や被災地を訪問し、自国民、他国民の別なく祈りを捧げてこられた。単なる象徴にとどまらず、「象徴的行為」を実践されてきた。その、身を削る長大な旅路がさすがにご高齢の身に負担となってきたことから、あの「おことば」となったわけです。 が、先生の見立てによると、改憲主義者(≒安倍首相)は、天皇は象徴として奥の方に鎮座してくれていれば良いのであって、その権威を利用して権力を行使したいだけ。肉声のおことば等を発せられることは迷惑千万。だから、「おことば」にもかかわらず、政権の対応は鈍かったとする。 さらに、欧米では政権交代可能な政党制が確立し、拮抗した力関係が維持されているところ、日本では、天皇制と、立憲民主主義という相容れない二項対立が、正に同様の「拮抗した力関係」をもたらしている。これは、一党独裁の国々と比べてよほど健康なのだ、としています。先生としても、若い頃はそんなことに思い至らなかったが、この年齢になり、死者や後世のことを考えるようになり、ようやく達した理解だとか。 天皇制を巡る先生の議論については、そういう意味で、(多分他でも読んだので)そうびっくりするほどの内容でもなかったです。また、海の民、陸の民、武芸の在り様等と、議論は横展開していきますが、せっかくなら、天皇制にフォーカスした議論を深堀りしてほしかった気がします。 ■
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by sergeant_cooper
| 2018-02-02 06:17
| 書籍・映画
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『アジア辺境論 これが日本の生きる道』(内田樹、姜尚中/集英社新書、2017)
☆☆☆★★ 『日本辺境論』から8年。今こそ「美しい日本」を取り戻す。カギは日本・韓国・台湾の連帯にあり! アメリカ、欧州で排外的な政治勢力が台頭する中、ロシア、中国の影響力が日増しに拡大している。米ソ対立の冷戦終結から四半世紀経ち、世界各地に複数の覇権の競合関係が生まれている。果たして、その狭間で日本が生き残るためには何が必要なのか? その鍵は日・韓・台の連帯にあり。アメリカとの一方的な従属関係を見直し、中国、ロシアなど、スーパーパワー間にある中小民主主義国家同士の協力関係の構築いかにして可能か。 世界史レベルの地殻変動と戦後の平和国家的な国の在り方を蹂躙する近年の日本の政策を目の前に、リベラルの重鎮二人がその理路を提示する。(以上、出版社の内容紹介より抜粋) お二人は、二度目の対談とのこと。前共著の『世界「最終」戦争論 近代の終焉を超えて』(2016)を、同年9月に読んで感想を投稿しております。 内田先生の本では、内容紹介にある『日本辺境論』(新潮新書、2009)が新書大賞を獲るほどのインパクトで、私も、先生の目の付け所に感心した記憶があります。で、今回は同じ辺境でも「アジア」辺境ときた。 政治学者の姜先生との共著ですので、いきなり現実的かつ政治的な切り口が立てられますが、国内外の論者も言うように、これからはアメリカ、ロシア、中国といった地域「帝国」が、それぞれの「ファースト」を掲げてパワーを持つだろう。それに対抗するには、ちょうど似たような歴史的背景、伝統文化、政治/経済の発展度合いを持つ日・韓・台の三か国が連携するのが一番の良策ではないかとのことです。 実際、韓国にしばしば講演に呼ばれる内田先生は、かの地の一般の人々と日本人の感覚がそれほどずれていないことを体感されておられ、姜先生も、日本から韓国や台湾に移動しても、全然違和感なく溶け込めると応じておられます。確かに、地理的にも文化的にも、近しいものはあるでしょう。 が、内田先生の本は大抵において賛成の私ですが、どうもこの提案だけは素直に頷けない。大体、この二か国の「反日」感情をどうすればいいのだ。先生としては、一度でいいから政治家が(パフォーマンスでいいので)慰霊碑とかの前で演説をし、謝罪をすればだいぶ違うされていますが、そう簡単に頭を下げられるか。 また、私たち一般人も草の根レベルで知り合いを増やすこと、個人名の知り合いがいるということが、相手国への感情の持ちようが変わるとされています。しかし、どれほど謝ってみたところで「恨」は永久に消えないとか言っている中華思想/儒教思想の国に対して、本当にそれが有効な手なのか、大いに疑問です。 本著は、この三か国連携のイシュー以外にも、アメリカのトランプ政権(と安倍政権の対応)、グローバル資本主義が国民資本を私物化している問題、自己責任や受益者負担という美名の下に、強者に富が集まり弱者は「死ね」と言われる現状を、大いに嘆かれています。これらについては、全く同感。今やリベラルの論陣を一手に引き受けておられる感のある内田先生の議論には、(姜先生ではありませんが)「稀代の独創的な独立不覊の思想家」を感じます。 本著は、上記のように大きく分けて二つのイシューが入ってしまったので、どうも本(議論)としては、集約感がないように思いました。それがちょっと残念。 ■
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by sergeant_cooper
| 2018-02-01 06:16
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『日本の覚醒のために 内田樹講演集』(内田樹/晶文社、2017)
☆☆☆☆★ 日本人よ、目覚めよ!沈みゆく国で語った、国家・宗教・憲法・戦争・言葉・教育・そして希望! グローバリズムに翳りがみえてきた資本主義末期に国民国家はどこへ向かうのか?これからの時代に宗教が担う役割は?ことばの持つ力をどう子どもたちに伝えるか?戦中派世代の経験から学ぶべき批評精神とは?憲法をめぐる議論から浮かび上がる政権劣化の諸相。 日本をとりまく喫緊の課題について、情理を尽くして語った著者渾身の講演集。沈みゆくこの国に残された希望の在り処とは?(以上、出版社の内容紹介より抜粋) 本著は、2011年から2015年頃にかけて行われた内田先生の講演を収録したものです。内容紹介とも重複しますが、題は以下のとおり。 1)資本主義末期の国民国家のかたち(立憲デモクラシーの会公開講演会) 2)これからの時代に僧侶やお寺が担うべき役割とは(全国日蓮宗青年会行学道場) 3)伊丹十三と「戦後精神」(第3回伊丹十三賞受賞記念講演会) 4)ことばの教育(全国高校国語教育研究連合会第46回研究会記念講演) 5)私が白川静先生から学んだこと(立命館土曜講座公開講演会) 6)憲法と戦争(琉球フォーラム講演) 7)SEALDs KANSAI京都集会でのスピーチ(SEALDs KANSAI京都円山公園集会) これまでの先生の著書には、日本の政治、経済、社会がおかしな方向へ進んでいることへの危機感が何度も書かれておりました。対米従属を通じての主権回復が、いつの間にかただの対米従属(だけ)になり、米国由来の新自由主義/グローバリズムを無批判に受け入れて政策化し、教育現場も市場原理に晒して荒廃させ、と厳しい批判は続きました。もちろん、他の論者にも同様の議論がありますが、先生ほど徹底してこれを行い、継続し、刊行し続けている人は珍しい。 おまけに、東アジアでは先生の本がどんどん翻訳され、また、脱線しますが、高校や大学の現代国語の入試問題では、先生の本からの引用が大変多いとか。 さて、これまでの本で警鐘を鳴らされた部分は同様だとしても、例えば伊丹十三、白川静といった「お題」について、個人的には(読む前には)関心がなく、一体どういう議論を展開されるのだろうかと思いました。が、それぞれ、戦後の批評精神や、学者の「熱誠」を取り上げながら、それとは対照的に、今の学問の世界にはそれが失われてしまったと繋げられています。なるほど。 先生は1950年生まれとのことで、67歳になられますが、この本を読んでも、まだまだ十二分な発信をされている。 「国語」「ことば」の題でも語られましたが、母語を使う話者の特権は、それを駆使して新たな概念を生み出すこと。コミュニケーション能力とは、コミュニケーションが断たれた状態で、「ありもの」を使ってでも即興にコミュニケーションを再起動させること。 先生の講演活動は、正にその実践であり実証だと思います。 ■
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by sergeant_cooper
| 2017-09-28 05:21
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『逆立ち日本論』(養老孟司、内田樹/新潮選書、2007)
☆☆★★★ 『下流志向』の内田樹と日本の知恵袋、養老孟司が火花を散らす。「ユダヤ人問題」を語るはずが、ついには泊りがけで丁々発止の議論に。それぞれの身体論、アメリカ論、「正しい日本語」、全共闘への執着など、その風狂が炸裂し、日本が浮き彫りになる。 なぜこんなに笑えるのか。養老は「高級漫才」とこの対談を評した。脳内がでんぐり返る一冊。(以上、出版社の内容紹介より抜粋) この本はもう10年前の本になりますが、図書館から借り出す手持ちの本が手薄になり、他に何かないかと国立市公民館図書室を探して見つけた本です。ウチダ先生の本は本当に、まだある。おまけにこれは、あの養老先生との対談ときた。 冒頭で養老先生が断っていますが、先生は脳科学の話題で合いの手を入れる程度で、ほとんど(ご自身が興味のある)ウチダ先生の話を聞いている、とのこと。確かに読んでみると、圧倒的にウチダ先生が語っている割合が多い。 また、養老先生も脳科学や「全共闘」の話題で合いの手を入れていますが、ウチダ先生と微妙にかみ合わず、ウチダ先生はそれ以前の議論をそのまま続けているのもどこか笑える。 がですね、そのかみ合わない部分が漫才的で笑えると言えば笑えますが、別な見方をすると議論が深まらずに漫談調で終わっているのは惜しい。何でもウチダ先生は子供の頃、お母さんとの間が密だったとのことで、よく「おばさん話」に付き合ってたので、おばさんのノリで話題がどんどんズレていくのが苦にならないというか、身に付いているのだそう。 ま、確かに、そういう本ではありました。 ■
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by sergeant_cooper
| 2017-04-28 05:48
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『属国民主主義論』(内田樹、白井聡/東洋経済新報社、2016)
☆☆☆☆★ 尊皇攘夷ならぬ尊米攘夷の「永続敗戦」レジームで対米従属を強化する日本。いつ主権を回復できるのか?本当の民主主義は、どのようなかたちで実現できるのか? 「コスパ化」「消費者化」「数値化」「幼稚化」「階級化」等をキーワードに日本を代表する二人の知性が徹底討議。自発的隷従の論理と心理を抉り出す。(以上、出版社の内容紹介より抜粋) 本著は、同じく両先生の対談本の『日本戦後史論』(徳間書店、2015)の続編に当たるもののようです。 『日本戦後史論』の方は、既に読んでいて2015年11月に感想を投稿しておりました。が、投稿当時、肝心の白井先生の『永続敗戦論』(週刊金曜日、2015)を読んでおらず、慌てて読みました。で、読んでびっくり(2016年4月に感想を投稿)。『永続敗戦論』を読んでようやく、現在のリベラルな、そして良識的な論壇が、戦後の有り様をどう位置付けようと努力しているのか、一望の下に見晴らせた気がしました。 さて、そこまで私の理解も進み、ウチダ先生のご議論もいろいろ聴き、この本です。 先だっても先生の本を読んだばかりというせいもあり、先生のお話しにはイチイチごもっともと思います。と言うか、ごもっともと思わざるを得ないような今の日本の政治/経済/社会の有り様が悲惨。対談を通じて、いろいろな指摘はあります。 読者としては、最後の方に何かしら「処方箋」なり「展望」なりを聴いてしめくくりにしたいところですが、両先生をもってしても、それさえ難しいようです。一体、日本はどうなっていくのでしょうかという心配が深まるばかり。 ■
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by sergeant_cooper
| 2017-04-21 06:14
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『「意地悪」化する日本』(内田樹、福島みずほ/岩波書店、2015)
☆☆☆☆★ 思想家と政治家が真剣に語り合ったとき、現代日本を読み解くキーワード、「意地悪」が浮上した。 今、戦後レジームのど真ん中に鎮座する権力者が架空のルサンチマンをまき散らし、それに人びとが共振して社会全体の「意地悪」化が進んでいる。こんな日本のままでいいのか? 政治、経済から学問、家族のあり方までを縦横に論じ、私たちの進むべき道を考える。(以上、出版社の内容紹介より抜粋) 政治家の福島先生が、あのウチダ先生への対談を申し込んだところ「快諾」されたとのこの企画です。 2015年、いわゆる戦争法案が強行採決され、特定秘密保護法も成立し、安倍政権は絶頂。果たして2016年の参院選を控え、与党は憲法発議が可能な三分の二を獲得するのかどうか、野党共闘は成果を挙げるのか、SEALDsの動向はどう評価されるのかといった政治動向下で行われた対談。 福島さんも同調されていますが、対米従属を通じての対米自立、いやもっといって対米従属しかないような安倍政権。とにかく何らかの戦争いや戦闘に自衛隊を早く参加させ、できれば殉職者が出て、「犬死させてもいいのか」という愛国的な世論一色に染め上げて、事実上、憲法などあってないが如くの状態に持ち込みたい(と思われる)言動に対し、痛烈な批判を浴びせています。安倍晋三および橋下徹という異色の政治家二人を取り上げて、本当にもう「こき下ろし」ています。 ウチダ先生の議論としては、これまで読んだ本での延長戦上かと思いますが、政治家として現実の国会討論や選挙戦を体験してきた福島さん目線が加わることで、議論がまた、重層化している。お二人に共通しているのは、言葉を見事に操り当てはめて、当意即妙な議論を展開していること。さすがだ。一方、「思弁的」と断られるウチダ先生の議論と、福島さんの(極めて現実的な)問題意識には、致し方のない距離感がある面もありました。 が、ウチダ先生をはじめとするリベラルで民主的な立場の議論が、こうも形を成してきていることには、心強さも覚えます。先生は、今は非常時モードに移行しつつある激変期だから、なおさら興味深いと言われています。個人的には、単なる興味の問題を超えて、政治的に何とかしないといけない局面かとは思います。 対談当時とは違い、トランプ大統領も登場し、「アメリカの意向を忖度する」ことで成り立ってきた自民党政権や日本社会は、確かにもっと、激変を迎えそうな気がしますし、迎えて欲しい。 ■
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by sergeant_cooper
| 2017-04-20 06:14
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『街場の戦争論』(内田樹/ミシマ社、2014)
☆☆☆☆☆ 日本はなぜ、「戦争のできる国」になろうとしているのか? 安倍政権の政策、完全予測!全国民の不安を緩和する、「想像力の使い方」。 シリーズ22世紀を生きる第四弾! 改憲、特定秘密保護法、集団的自衛権、グローバリズム、就職活動…。「みんながいつも同じ枠組みで賛否を論じていること」を、別の視座から見ると、まったく別の景色が見えてくる! 現代の窒息感を解放する、全国民必読の快著。(以上、出版社の内容紹介より抜粋) ウチダ先生の本はこれまで何冊も読んでますし、もう読み尽くしたかとも思ってました。大体、トーンは同じだし。 と思いながら「まえがき」を読むと、(諸般の事情により?)2013年暮れから2014年夏にかけての半年だけで何と10冊以上の本を出していたとか。当然、重なる部分も出てくるしで、今回の本著、「どこかで読んだ話」は相当切り捨てたとのことです。ただ、そうは言っても上記の内容紹介にある話は他の本でも同様に語られてはいますが…。 ま、前置きはさて措き、著者の議論はもう、99.999%以上正しいと思います、賛成です、私もそう感じます、という内容です。 私も、ウチダ先生とは(おそらく)正反対の立場の論者の本も読んでいるので、もう直接噛み合わせて優劣をつけるというのが非常に難しいのですが、少なくともこの本に沿って議論を聴いている限り、まったく正当に思える。 最初の議論からして刺激的。 もし日本がミッドウェー海戦直後に講和していたらどうなるか。著者がわざわざこういう「if」を持ち出すのは、先の大戦にて、日本が敗戦とその後の対米従属路線を主体的に総括さえできないほど徹底的に負けてしまったため、もし、中間程度で講和してたらどういう日本が今あるか、ということを考えてみようというもの。当然、大日本帝国憲法が存続し、私たちは「臣民」であるし、負け戦の途中で講和したため、「次にアメリカと戦う時はどうやって勝つか」を真剣に考え、当該負け戦の原因と責任追及を徹底的に行なっていただろう。仮に海外植民地をすべて手放した大日本帝国であったとしても、今のような状態ではなく、少なくとも「主権国家」であっただろう。 先の大戦の総括については、白井聡、片山杜秀らの本でも突っ込んだ議論がありましたが、先生も同趣旨です。さらに、先生のご持論でもある「国民国家は株式会社ではない」から、国家は経済成長のために存在するのではない、どんなことがあっても生き延びて国民を守るために存続しつづけるものなのだ、と続きます。これが、現政権の「経済成長最優先」路線批判に通じます。 また、議論を広げて、改憲勢力の底の浅さ、就職活動の在り方、学問の在り方(を武道に関連づけて)、平時と有事のリーダーの在り方や育て方と、幅広い。どの議論をとっても、言われてみれば膝を打つ「当たり前」感がありますが、誰も正面からここまで口にしないことを敢えてどんどん俎上に載せるのが先生らしい。と言うか、今の言論人で先生ほど多彩なフィールドにわたって強靭な論陣を張っている人がいるだろうか。 またしても、目から鱗が落ちました。 ■
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by sergeant_cooper
| 2017-04-19 05:46
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『世界「最終」戦争論 近代の終焉を超えて』(内田樹、姜尚中/集英社新書、2016)
☆☆☆☆★ 二人の知の巨人が提示する新世界の見取り図!「不機嫌な時代」を暴走させないために。 アメリカの国力の低下と共に勃興する諸大国の新たな覇権主義。拡大する中東の戦乱、国境を越える大量の難民、欧州のテロ事件。 行き過ぎたグローバル経済と格差社会。国内に目を転じれば大規模な災害が起こる中、平和主義の戦後レジームからの脱却を主張する動きが勢いを増している。いよいよ混迷を深める世界と社会の情勢。 その背景にあるのは、世界史レベルのパラダイム(知的枠組)の地殻変動である。顕在化している近代の崩落過程についてリベラル派の言論人を代表する二人が語り合い、難局を避けるために必要な世界の見取り図を提示する。(以上、出版社の内容紹介より抜粋) 「最終」戦争と形容された、テロの野放図な拡大の中に生きる私たち。もはや古典的な戦争はなく、準戦時体制が続いているかに見える。液状化する国民国家。これに抗して逆に、「帝国」化(=文化、習俗や言語による広範で緩やかな連合国家)が進むのではないかという展望。 経済成長のみを国是とした監視国家・シンガポールを(まさかの)見本に仕立て、挙げて都市化、棄民化、里山の崩壊を(知ってか知らずか)推進する我が日本。「金よりも命が大事」という当たり前の常識が逆転している我が日本(と、グローバル・スタンダードを押し付けるアメリカ)。 こうしたことは、日本史を振り返ると、何故か70年周期で起きてくる。それまでの体制にただ「飽きて」「壊したくなり」「不機嫌にな」って、暴走する。そういう日本のままでいいのか、お二方の対論であります。 あとがきでウチダ先生も述べられていますが、お二人のご意見はほぼ一致しており、共に1950年生まれ、後期高齢者入りするお二方が、まさか朝鮮戦争の年に生まれて、第二次朝鮮戦争を心配しないといけないとは(皮肉)と、真剣に議論されています。 書かれていることは、私が要約し切れないほど、お説ごもっとも。どの切り口から見ても、グローバル・スタンダード、(行き詰まりが明らかな)経済成長至上主義、棄民化や兵器産業を興してまで成長を追い求める資本主義等、この時代の「行き詰まり」感を感じます。が、上記で言われるように、ただ、今の仕組みに「飽きた」「不機嫌」だからと言って短絡的にゼロリセットを求める「空気」には争わないといけない。 近未来の、あるべき日本の見取り図を強く示唆する、内容の濃い対論だと思います。こういう本が、もっとメジャーに読まれないと。 ■
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by sergeant_cooper
| 2016-09-02 06:03
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『内田樹の大市民講座』(内田樹/朝日新聞出版、2014)
☆☆☆☆★ 大市民とは、日々忙しくとも子孫の世代までを視野に、今なすべきことを考える人。ウチダ先生による、そんな大市民のための時評的エッセイが満を持して登場。生き方・仕事、メディア、国際関係、教育、政治・経済など6カテゴリーには役立つ処世術も満載。 「『どうしていいかわからないときに、どうしていいかわかる』直感的な判断力はもともと生物には備わっている。人間にはそういう力がある。混迷の時代に私たちが習得すべき最優先の能力はこれである。『この人は信用できるか、できないか』をロジックともコンテンツとも無関係に瞬時に判断する力である。まずこのコラムを読んで著者の信頼性を評価するところからお始めください」(本書より) 「AERA」人気連載コラム6年半分がついに一冊に。(以上、出版社の内容紹介より抜粋) ウチダ先生の本はもう、結構たくさん読んでおります。本著は、特に目的もなく国立市公民館図書室をぶらぶらしていて見つけた本。まだあったか、という感じで借りてみました。 2008年、つまり旧自民党政権時代から、雑誌AERAに900字のコラム(時事評論)を連載されたものをまとめられたものですが、一応先生のスタンスはもうわかっている読者(私)としても、またあらためてごもっとも、と思います。 先生曰く、よく将来の予想を立てるのは好きなのだそうで、その理由は、後になってすぐ、自分の予想があったのか外れたのか、またその理由まで検証できるからだそう。そういう意味もあって、わざわざ2008年という古い時期からのコラムも載っているのでしょう。 やはり特に、新自由主義、グローバリズム、メディアの凋落、教育行政の混乱については舌鋒鋭く、たった900字でも「慧眼」であります。もったいないからもっと聴きたいくらいです。そしてもちろん、地元・阪神地区ならでは、橋下(知事・市長)による強引な手法への批判も強い。 AERAがどのくらい売れている雑誌か知りませんが、当の雑誌(メディア)に向けられた批判については、どう感じているのでしょうか。まさか「ガス抜き」して、こういう批判も公平に載せていますよ的に躱しているのだろうか。そうだとしたら、とんでもない。「当事者意識」をもって受け止めてほしいものです。 ■
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by sergeant_cooper
| 2016-09-01 05:52
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