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1964年(昭和39年)7月8日生まれ。蟹座でB型。
広島市出身、東京都国立市在住。 学生時代は水泳部(ちなみに100m自由形のベストタイムが60秒ジャスト)。 一番の趣味はアメリカンフットボール観戦で、1992年以来のNFLファン。好きなチームはTennessee Titans。 好きなアーティストのコンサート(浜崎あゆみ、クラシック等)に行ったり、路上ライブで見つけた若手のライブに行ったり。ピアノを始めたのも近年のマイブーム。演奏の動画は、以下です。 「片想い」 「17才」 「サイレント・イヴ」 「Honesty」 「We're All Alone」 「スター・ウォーズ」 「Voyage」 「上からマリコ」 「希望の轍」 ブログパーツ
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『イワン・イリッチの死』(トルストイ/岩波文庫、1886)
☆☆☆☆☆ 一官吏が不治の病にかかって肉体的にも精神的にも恐ろしい苦痛をなめ、死の恐怖と孤独に苛まれながらやがて諦観に達するまでの経過を描く。 題材は何の変哲もないが、トルストイの透徹した人間観察と生きて鼓動するような感覚描写は、非凡な英雄、偉人の生涯にもまして、この一凡人の小さな生活にずしりとした存在感を与えている。(以上、出版社の内容紹介より抜粋) 『人はなんで生きるか』(1882)とともに、人に勧め、自分も再読した本です。 ストーリーとしては、ある意味あっけなく、そっけないほど。 順風満帆、栄達を極めていた一官吏が、ふとした事故から病を患い、悪化させ、それが元で死んでしまう。しかしトルストイはこの過程で、イリッチの身体的苦痛はもとより、なぜ自分だけがこんな災難に遭うのか、どうしたら助かるのかとあがく様、さらにはピンピンしている家族や医者を恨み鬱屈する様を、赤裸々に描き出します。一方で、グラーシムという、無学だが心根のいい下男の奉公ぶりに接し、なぜか心が休まる様、そして最後には、死への恐れから解放され、甘んじて、神の下へと旅立つ心境へと変わっていく様をも描き出します。 もちろん、読者の私がこんな目に遭っているわけではありませんが、トルストイにこうまで描写されると、まるで自分も、多分こう苦しむだろうな、こう惨めな様を晒し出すだろうなと思わずにはいられません。 結局イリッチは、自分では栄達した気になってはいたが、つまるところ、ただの小市民、一官吏に過ぎなかった。極言すると、神の前では、ただの人に過ぎなかった。この点に、イリッチは最後の最後に気が付いて、おそらく、「手放す」ことを学び、「すがりつく」ことを止め、「執着する」ことの無意味さを悟ったのでしょう。 別にトルストイは、そんなことを論述しているわけではなく、この本はあくまで民話、フィクションですが、このやさしい語り口を通じて、誰にでもわかるテーマとして提示して見せた。あらてめて、トルストイの、人間、そして人生への洞察力の凄さを思い知らされました。 しかし、これを別に、世界最高峰の作品群を生み出した文豪でしかできない技、と片付けてはいけないと思います。ちょうどトルストイがして見せたように、トルストイが持った「限りなく優しい眼差し」は、私たちも、等しく持つことができると思うのです。 私たちは、トルストイが作品に込めたメッセージそのものと一緒に、トルストイの姿勢そのものからも、多くを学ぶことができると思います。
by sergeant_cooper
| 2016-02-17 06:26
| 書籍・映画
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